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グラスの雫№5 真鶴その28

「どう思う?これ…」
 万膳利弘氏が奥様のひろみさんに便箋を見せた。藤枝氏からの熱の入った手紙である。
「ふんふん。よか人じゃね。っと、神戸ね。神戸って関西じゃなかね」
 差出人の住所が神戸。二人はそれにひっかかったようである。
 万膳利弘氏は関西の企業にだまされて、5000万円ほどの損失を出してしまった経緯がある。そのせいで、新婚早々、万膳氏は裁判所にひっきりなしに通うこととなった。新妻のひろみさんは、なんでこんなややこしい人と結婚してしまったかと後悔の日々を過ごす。
「関西の人だけは取引しない、決めたんじゃなかったっけ?」
「あぁ、決めた。決めたじゃっど…」
 万膳氏は何度も何度も、藤枝氏の手紙を読み返した。読めば読むほど好人物に思えてくる。「会うだけならいいか。いやなやつなら、取引を断ればいいんだし…」
「来年なら会える…」
 万膳氏は迷った末に返答した。
 その返事に藤枝氏は狂喜乱舞。
「おかちゃん、万膳さんから来年会うって返事きたよ」
 藤枝氏の奥様、邦子さんに満面の笑みを浮かべながら話した。
「よかったね。飛行機代ためないとね…」
 翌年、乳飲み子の琳太郎を抱えた藤枝夫妻。鹿児島空港に降り立つ。ドキドキしながら、わくわくしながら、レンタカーを国分市に転がした。目指すは万膳氏が経営する酒販店。
「やぁ、どうも…」
 藤枝夫妻と琳太郎を迎えてくれたのは万膳夫妻。
 まだまだ警戒を解かない万膳氏。そんな事とは露とも思わず、会いたい人に会えた喜びを体いっぱいに表現する藤枝氏。
 時は2000年1月24日。小さな駆け出し酒屋とまだ誰からも認められていない芸術家肌の蔵主。厚い友情と深い信頼が二人の間で芽生えていく記念すべき日であった。

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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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