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グラスの雫№5 真鶴その27

 神戸は東灘に大宗商店という小さな酒屋がある。1995年の阪神淡路大震災の少し前に立ち上げた。歴史的にはトップウインとほぼかぶる。
 店主は藤枝肇。彼は特色のある酒屋を目指すために地酒の充実を考えた。品質の高い日本酒をそろえよう、取引をお願いしようと、地道に酒蔵を訪ねる事となる。店に並べたいのは人気もあって知名度の高い日本酒。当然、品不足。藤枝氏が腰を低くして、酒蔵を訪問してもほとんどのお蔵が相手にしない。蔵主はこういった輩が年中来て、うっとおしく思う。無理もない話だ。
 京都の伏見に松本酒造がある。寛政3年(1791年)に創業というから200年以上の歴史を持つ蔵だ。
 藤枝氏がこのお蔵を訪問した時には、他のメーカーさんとは違う、暖かいもてなしをされたという。結果、商品の取り扱いを許されることとなった。大宗商店特約第1号。藤枝氏、自力で切り開いた最初の商品名が「澤屋 まつもと」である。
 1999年の秋、松本酒造で藤枝氏は面白い情報を得た。
「鹿児島で新しく焼酎蔵が立ちあがった。復活といったほうが良いかも。名を、万膳。覚えとくといいよ」
 藤枝氏は、その後、鹿児島の大手の焼酎メーカーさんに、万膳とはどのようなお蔵か質問したという。
「はぁ、知ってますよ。なんでも、酒屋が立ち上げたらしいですなぁ。復活?物好きですなぁ」
 半分、バカにしたようなニュアンスが伝わってくる。
 大宗商店は阪神淡路大震災で大きなダメージを受けた。もちろん、近隣の方々も含めてだ。彼は、もう一度やり直す大変さ、復活のエネルギーがどれくらい大きなものか、身をもって体験している。
 藤枝氏は気がついたら、受話器を握っていた。相手は万膳利弘。
「一度、会ってください」
 夢中で思いを伝えた。会った事もない相手。年齢さえわからない。はたして、鹿児島の人間に関西弁が伝わるのか。万膳氏は大いにびっくり、戸惑い、迷惑さえ感じたであろう。
 電話を切った後、藤枝氏は「そうだ、手紙だ。手紙を書こう」
 必死で書いた。情熱を持って。まだ会わぬ相手に。会いたいと…。
  
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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いずみっちょは、これ♪と思った事には貪欲に無防備に突き進んで楽しそうやね~壮とにてるよ(笑)

はすっちさん。
書き込み
あんがと。
壮くんに似てるなんて
光栄でございます。
プロフィール

higemaster

  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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