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小学校の思い出外伝 棺  

 タクシーは上八万のバス停を左へ折れて、竹薮を右手に見ながら小さな丘の小道をしばらく行きます。母の実家は茅葺の大きな建物でした。右に牛小屋があります。私はそこに座ってモウモウと鳴く牛とにらめっこをするのが好きでした。が、その日はそれが出来るような空気ではありません。バタバタと小走りで両親が家に入ると棺が置かれていました。電報で危篤と知らされた兄はすでにこの世の人ではなくなっていたんです。泣き崩れながら母は棺の中の長兄の顔を覗き込んでいます。しばらく見つめていた母は後ろの座布団の席に戻りました。が、すぐに母は棺に近づきます。
 「もう一度見せて…」
 昔の棺は今と違って覗き窓がありません。棺のふたを誰かが開けます。母は再び兄の顔を食い入るように見てました。しばらくして戻っても、
 「もう一度…」
 何度くり返したでしょう。私の脳裏に強烈に刻まれたのは繰り返し棺の中を覗き込む母の姿でした。

 
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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