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バー物語(フィクション)№291

 2年前。わざわざ長尾さんの会社に行って出入り禁止を申し伝えた。自己嫌悪で吐きそうになりながら帰路についたのを思い出す。
 「マスター、元気?久しぶりやね」
 相変わらず人懐っこい笑顔でこちらを見る。
 「はあ。なんとか」
 長尾さんはそれ以上会話せずに静かにワイルドターキーの杯を重ねた。迷いはなかった。あなたは出入り禁止です。言う必要がない。彼もわかって来ている。
 「マスター、家の近所に変わったラーメン屋があってね。全然流行ってない。不味くはないんだけど…」 
 長尾さんが食べ物屋の話を始めた。何が言いたいのか。黙って聞く。
 「鹿児島出身のそこの大将、俺も両親が鹿児島出身で親しくなったんだけど…。で、暇な店なんでそこで将棋を指しだしてね。その大将は強くて俺は一回も勝てない。マスター、将棋は?」
 将棋。手ほどきは小学生の時。おやじに教えてもらった。高校に入るとすこぶる強い友達がいた。彼に勝とうと思って将棋の定石の本を読み出した。やっと勝ち負けに持ち込めるようになった。あれから20年か…。
 長尾さんがじっとこちらを見ている。
 「将棋盤、買って来ましょうか」
 「わざわざ買うことなんか…」
 「いえ、すぐです。コンビニで売ってます」
 私は2000円を持って店から飛び出した。出入り禁止解除。言わなくてもわかる。
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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