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バー物語(フィクション)№86

 一週間後、喧嘩好き君と連れの男が来た。神亀の大吟醸ひこ孫は封を切らずに置いてあった。黒板にも書いていない。
 「ジャックダニエル、ロックで」
 「ぼくも」
 まず喧嘩好き君がオーダーして競馬新聞を持っている年上の男が続いた。そうか、彼らは競馬の帰りに飲みに寄るのか。そういえば先週も日曜日。前回チェイサーをタンブラーでお出ししてごっついと言われたので小さなグラスを使った。喧嘩好き君は日本酒を書いてある黒板を見てニヤっと、
 「神亀の大吟醸は?マスター」
 「ああ、そのお酒ですか。飲んじゃいました。うまかったですねぇ」
 「え?飲んじゃった?手に入ったのか」
 「はい。お客さんに次の日に来てくださいよって言ったのに来てくれなかったので…。飲んじゃいました」
 「何言ってる。俺は次の日に来るとは言ってないぜ。マスターが言ってただけだろう」
 「そうでしたっけ。いやー、本当に美味しかったです」
 「マスター、嘘はいけないな。手に入らなかったんだろう」
 「お客様、私は嘘とお酒が大嫌いなんです」
 「何を?からかうのか」
 「杉浦君、そんなに怒るなよ」
 競馬新聞がたしなめた。そしてこちらに向かって
 「マスターも人が悪いな。さっさと出してよ。あるんでしょ。マスターの顔に書いてある」
 競馬新聞は彫りの深い顔をしていた。九州の方の出身か。
 「ばれてますか。これでいいのか不安ですが。実は神亀の大吟醸というお酒はなかったんですよ」
 私はひこ孫の4合瓶をカウンターの上に出した。
 「あってますかね。杉浦さん」
 
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テーマ : 連載小説
ジャンル : 小説・文学

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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