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バー物語(フィクション)№84

 稲葉さんはワイルドターキーをジュースを飲むようにすぅーと飲んだ。きついバーボン(ターキーは50,5°)をおいしそうにハチミツレモンを飲むがごとく。初めて見た。いきがってバーボンのストレートをグッと一気に飲む人もいる。でもどこか苦しそう、ストレスを感じながら飲んでいるように見える。しかし稲葉さんは違った。ボルドーのグランヴァンをいつくしむように香りを楽しんでスッと飲む感じ。
 「ここのダブルは量が多いね。もう一杯」
 稲葉さんはニコニコ笑いながらおいしそうにもう一杯すぅーと飲む。
 「大崎、ビールか。うまいか?」
 「麦芽100パーセントのビール。うまいですよ。マスターともさっきビールの話を…」
 「大崎、今日はパイプか」 
 「はい。この葉はダンヒルで、少し重いですが、香りがナチュラルで…」
 「大崎、バーボン飲むか?」
 「はい。いただきます」
 稲葉さんは人の話を最後まで聞かないタイプなのか、気が短いのか。その間お連れの女性は静かに1杯目のワイルドターキーをなめるように飲んでいた。稲葉さんは大崎さんにワイルドターキーをおごって自分も3杯目を飲みだした。ロックグラスを右手に持ったままじっと一点を見つめている。L字のカウンターの奥。化粧ベニアをじっと見ていた。それから店内をゆっくり何か確認していくように見ていった。
 「マスター、お酒詳しそうだね。長く通うような気がするよ」
 稲葉さんは私にしゃべりだした。彼も外国人のように鼻が高かった。俳優かなと思うぐらいきれいな顔立ちだ。
 「いえいえ、お酒はど素人です。よろしくお願いします」
 「マスター、客は金を払ってるんだ。謙遜にしてもど素人と言わないほうがいいな」
 私をさとすように言った。ニコニコは続いている。
 「あの壁、さみしいね」
 さきほど稲葉さんがじっと見ていた化粧ベニアを指差した。
 
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テーマ : 連載小説
ジャンル : 小説・文学

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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