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小説・パッションと指揮 その29

 医療と音楽と言えばアルベルト・シュヴァイツァーを思い浮かべる方々が多いのではなかろうか。
 江里の才能を客観的に考えてもその域に到達するのは可能であろう。しかし、青井彰はもっと高いレベルの総合芸術家を江里に感じていたようだ。
「江里さんは、ダ・ヴィンチになれるわねー」
 青井彰は続ける。
「レオナルド・ダ・ヴィンチは医学は当然、科学、数学といった理科系全般から、音楽、絵画、彫刻の芸術全般に精通していたの。知ってるわね」
 全員うなずく。息をのみながら青井彰の言葉を待つ。
「今日のラフマニノフも普通は弾けないの。人前で…。ラフマニノフの3番も弾けてしまうでしょ。たぶん。見たことないけど、きっと美術も得意なはずよ。そうよね、江里さん?」
 江里は黙って笑っている。
「人類史上、ダ・ヴィンチ以上の人物は存在しないわ。見てみたーい。二人目の総合科学者兼総合芸術家。あー、長生きしたいわ」
 青井彰はうっとりとした目で天井を見上げた。
 このコンサート一つでそこまで感服したか。いや、青井だけでなく、多くの聴衆が感じたかもしれない。
 芸術は考えるものではなく感じるもの。科学もそうに違いない。真理は感覚から来る。

                          小説・パッションと指揮 完   
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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