AX

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小説・パッションと指揮 その27

 乾杯の中、当然江里への絶賛の嵐。
「いえ、ボクなんて、まだまだです…」
 どこまでも謙虚な江里である。
「オーケストラも、まーまーだったと思うよ。リハサールよりも、ずっと良かったよね。ね、先生」
 藤井が私に相槌を求める。
「うん。良かった。ただ、ひょっとしたら、あの指揮者は師匠が悪かったかもね」
「え?どうして?」
 伊達がすぐに食らいつく。
「だって、あの難しいコンチェルトを暗譜で弾けるって言ってたよ。すごい才能だわ」
 彼の学生時代、ひょっとして研究生時代、もしくは指揮見習い時代に、師匠が極端に音のズレや響きの充実、そして細部の鳴りを気にしていたのかもしれない。リハーサル中、ずっとだ。師匠自身、もっと大きな音楽感を持っていたとしても、それを弟子にうまく伝えることができなかった可能性もある。
 天才は、師匠を選ばない。極端に言えば師匠に師事しなくても勝手に世に出てくる。しかし、天才にわずかに及ばない才能をもつ音楽家は、受けてきた教育によってかなり左右されてしまう。運、不運で片づけることができない世界がある。もっと不幸なのは、天才にちょっと足りない音楽家は後年、経験を重ねてから真理真実に気がつく。
『オレはなんと遠回りをしてしまったのか』と。
スポンサーサイト

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

higemaster

  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
最近の記事
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。