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小説・パッションと指揮 その20

 昔の歌謡曲を耳にする。瞬間、その時代に記憶が戻る。その場にいた匂いまで思い出す。このような経験はないだろうか。
 まいにちまいにちぼくらはてっぱんのー。この曲を聴くと思い出す。
 およげたいやきくんは1975年の年末から大ヒットした。当時、私は大学1年生。河原町を歩いていると度々聴こえてくる。気持ちは焦っている。イラついている。ベートーベンのソナタ第28番を仕上げて試験で弾かなくてはいけない。早く家に戻って練習しなければならない。のに、体はパチンコ屋に向かう。球を穴に入れてはじく。こんなことをしている場合ではない。が、ジャラジャラの大騒音とおよげたいやきくんが、どこか心地よい。
 いや、心地よいはずなんてないのだ。逃げている。現実逃避。ショートホープを口にする。煙が目に染みて涙が出る。
 大学を出たのは4時過ぎ。時計は8時を指していた。そろそろ帰るか。儲けもせず、損もせず、ゆらりと立ち上がってパチンコ屋を出る。河原町はにぎやかだ。串カツ屋に入る。まだ帰ろうとしない自分。負けている。
「酒」
 透明なコップに入った菊正宗が出てくる。一気飲み。
「おかわり」
 2敗目はちびちびすする。
「お客さん、コースで?」
「いや、3種類ほど揚げて…」
 無言で串カツを揚げる店主。チッ。舌打ちが聞こえそうな不機嫌そうな動き。 
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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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