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小説・パッションと指揮 その12

 スヴャトスラフ・リヒテル。20世紀最高のピアニスト。彼は、指が太く大きすぎて、黒鍵と黒鍵の間に指が挟まって抜けないというエピソードを持つ。当然がたいもでかい。彼のリサイタル。椅子に座ると、ピアノの両端をムンズとつかみ、重たいフルコンサートピアノを動かして位置を調整する。一般的なピアニストは椅子の方を動かすのである。
 江里は同じ事をこのステージでやって見せた。ピアノをつかんで、がたがたと動かす。調整が終わった後、怪力江里は、涼しい顔をして指揮者を見る。
 リハーサルの前、調律師と藤井達ときっちりピアノの位置を決めたはず。ピアニストは椅子の高さ、ピアノの位置には神経質である。さては誰かが動かしてしまったのか。
 いよいよ本番。
 不安定な和音。江里はうまい。しかしもう少し濁ってもいい。もっとゆっくりでもいいかもしれない。しかしこれは趣味の範囲。続いてオーケストラの弦の厚いメロディー。団員の本気度アップか、リハーサルよりもはるかに優れた響き。響き。指揮者がずっと気にした響き。しかし表面上の響きを求めていては音楽は出来ない。もっともっとCの厚みと暗さとエネルギーが必要である。これが薄いと次のチェロが奏でるメロディに生命が吹き込まれない。ピアノはそのチェロに相槌、否定、色彩を与えていく。リハーサルで出来ない事は、本番でも出来ない。出来ないというより、指揮者、団員がそういう音楽を求めていないのかもしれない。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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