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小説・パッションと指揮 その6

 第3楽章に入っても指揮者は客席の後ろに来て、相変わらず響きを気にしている。しばらくしてステージに走って戻ろうとする彼。
 私は思わず立ち上がって彼の肩をつかもうとする。が走るスピードに追付かない。自分のイメージより遅く動く筋肉。または動体視力が劣っているのか。結果、軽く突き飛ばす格好になってしまった。
「おい、まだ2時間ある」
 振り返って私を見る指揮者。
 会場の時計を見ると12時。本番は14時。
「2時間、今からしっかり勉強しろ」
 まったく余計なおせっかいである。しかし、ピアニスト江里が持つ音楽感や芸術性とこの指揮者オーケストラがあまりにもかけ離れている現状。クラシック音楽の先輩として見ちゃおれなかったのである。
「あ、はい」
 またまた素直に返事して駆け戻っていく。指揮は林田勉という男。憎めないが、もどかしい。

「どうでした?」
 リハーサルが終わって男が近づいてきた。
「あほか、なんじゃこのリハーサルは。音楽作りより響き優先?音なんて本番に客席が埋まってしまったらまったく別の世界になるだろうが。わからんのかボケ」
「はー」
 男はニコニコ笑っている。
 私は、はっと気がついた。男はピアノを調律してくれた坂下氏であった。
 
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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