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フィクション★ハタッチⅡその2

 中畑は言われるままに廊下に出た。3月始めといえども、廊下は寒くはない。暖かく感じるぐらいだ。しかし、震えは口元からきた。椅子が用意してあったが座れない。がたがたと歯が鳴る。深呼吸。鼻で大きく吸って口からゆっくり吐き出す。何回か試みたが、足まで震えている。自分の手を見る。何度も何度も練習したバッハ。左手だけでも暗譜で弾ける。見ている手が小刻みにゆれている。大声を出したい衝動にかられた。
「入ってください」
 案内の係りに促された。
「こちらへ」
 近づく。
「協議をした結果をお伝えいたします。君が提出した書類と違う曲目を審査するわけにはまいりません。よって失格といたします」
 意味はわかった。浪人決定だ。お辞儀をしなければ。思っても体が動かない。
「1年後、その気があればまた受けてください。では、退出をお願いします」
 中畑は深々と礼をした。
 上野駅から東京駅。中畑は電話を自宅にした。
『お母さん、ごめん。浪人です。曲目を書き間違えてしまった。ごめん』
 次は、師匠の中田先生に電話。アホやなー、また、来年がんばれや、励ましの言葉が遠くから聞こえるようだった。
 新幹線に自分が何故乗っているのか意識できない。夢遊病者のようにたどり着いたのは、水井先生の家だった。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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そんなことって、ありですか!?

受験曲、手違いとかではなく、本当に書き間違えてしまったのですか!?

…で、本当に1年…遅れて?
この後、別の展開とか??

どちらにしても、結果が気になります(+_+)

浪人

大きい黒さま
ハタッチは浪人しました。おっちょこちょいですね。ハタッチとハタッチⅡに分けたのは、理由があります。ここからの話をハタッチ一人称で書くには無理があるので分けました。
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higemaster

  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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