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教員Aその153

 月曜日、池山音楽科主任に修学旅行無事終了の報告をした。解散時刻変更については何も問われなかった。続いて校長室。応接椅子に座るようにうながされる。
「東武トラベルはどうでした?」
「添乗員がしっかりしていました。運転手丁寧で、バスガイドさんは笑顔を絶やしません。快適な2泊3日の修学旅行でした」
「フェスティバルホールは?」
「ありえないレベルのオペラでした。ウイーンフィルは日本では手を抜くとの評判ですが、今回のモーツアルトのオペラはそういったことは微塵も感じませんでした。指揮者のベームが歌劇団とオーケストラの人たちに慕われている、尊敬されているというのがよくわかりました。生徒は生涯でもう一度あるかないかの貴重な体験ができたと思います。序曲が始まると、オペラに対しての期待感の高さが感じられます。それはフェスティバルホール全体の空気なのです。生徒達は弦楽器の最初の音から異空間に突入した事を実感できたはずです。なにしろ、世界一と言われているオーケストラの音。ま、ベルリンフィルが世界一とおっしゃる方もおられますが、それはカラヤンによるところが大きいと思います。ベルリンフィルも素晴らしいと思いますが、ウイーンフィルの弦楽器の音の幅と広がり厚み。ん?同じかな。金管楽器にしても…」
「あー、A先生、音楽の事はよくわからないので結構です。お疲れさまでした」
「まだ、序曲のさわりとオーケストラについてしかしゃべっておりませんが…。今から本筋についてお話…」
「いえ、それはまたの機会に。報告ありがとうございました。はい。お疲れさま」
 私はしぶしぶ立ち上がってお辞儀をした。ドアを開けて振り返ってもう一度お辞儀。校長先生も頭を下げた。音がしないようにゆっくり木製の重たいドアを閉めた。
 作戦成功。これでだれにも奈良のドリームランドに行った事をとがめらる事はあるまい。何しろ校長先生にお疲れさまと結構ですを言わせた。煙に巻くには得意分野をひたすらしゃべり続けるに限る。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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