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教員Aその130

「スタインウェイというピアノを大学卒業のときに買いました。その借金に毎月5万円ずつ返しています。今住んでるマンションは月45000円です。お給料は12万円です。つまり、一ヶ月2万円ほどで生活しています。ので、お米なんて贅沢なものは買えません。わかったか?」
「新聞は?」
 IQ140の家出生徒が質問する。
「新聞はとってます。新聞や電気代の集金でお金がない時は家の中で音を立てないように息を殺して、集金人があきらめて帰るのをじっと待ってます」
 言いながら情けないやらおかしいやら。自分でしゃべりながら笑ってしまう。生徒もみんな笑い出した。
 そのホームルームがあった週末の日曜日お昼。
『ピンポーン』
 家のチャイムが鳴った。
「先生、お米持って来たよ」
 ドアを開けると、クラスの中では地味で目立たない生徒の顔がそこにあった。
「え?お米?」
「家で採れたお米です。田んぼを持ってますので。先生貧乏でお米ない、とこの子が言うので。どうぞ使ってください」
 母親が後ろからしゃべっている。見ると大きな米袋。
「こんなに?」
「いえ、20キロしかありません。二人で運べば軽いものです。無くなったらまたおっしゃってください」
 私が住んでいるのは4階。階段だけでエレベーターはない。20キロもの米をえっちらおっちらとかついで来たのか。
「あ、お茶でも…」
「いえ、すぐに家に戻らないといけないので。ここで失礼します」
 ドアを閉めて二人は帰っていった。階段を下りる足音をドア越しに聞く。しばらくしてエンジンの音。下の駐車場まで見送るのが礼儀だが動けなかった。感謝の気持ちがいっぱいすぎて。
 米袋を家に入れながら口の軽さを少し後悔した。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

涙…

教員A、感動物語。

…こういう展開になるとは… ^_^; 




ますます楽しみ…♡

大きい黒さま

実際、泣きました。かっこ悪いので書きませんでした。ピアノ専攻の生徒さんです。非常に地味な生徒さん。私とほとんどしゃべったことがない子でした。
プロフィール

higemaster

  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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