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教員Aその108

『次は、そうだ、ビスタフィル…』
「はい…、ビスタフィル…」
 大阪フィルハーモニーの、はきはきした声とは打って変わって、ややくぐもった声。しかもだるそう。
「コンチェルトのピアニストいりません?」
「あー、何弾けるの?」
「…」
 何を弾けるか聞かれてしまった。そこまでは考えてなかった。答えに困って黙っていると
「6月にチャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルトがあるなー。その時弾く?」
「……」
 6月なんて2ヶ月しかない、へたすると1ヶ月…。
「何?何弾ける?」
「グリーグとベートーヴェンの…」
「それは、最近やったなー」
 1年上に前野早苗と言う美人のピアノ科の先輩がいた。彼女は学内演奏会で素晴らしいピアノコンチェルトを弾いた。ベートーヴェンの4番とラヴェルの左手。とっさに思いついた私。
「あのー、ラヴェルは?」
「G-dur?D-dur?」
 あのラヴェルは確かニ長調。
「D-durで?」
「左手かぁー。OK。チケット負担300枚。1枚2000円。OK?」
「はい。OKで」
 OKの繰り返しで即答してしまった私。
 後は、住所と名前を聞かれて、はいさようなら。2000円のチケット300枚ってなんぼや?おっ、ろくじゅうまんえん。下村先生の借金は毎月5万円ずつ返していた。ボーナス時に出来るだけプラスして、あと残りは50万円。お返しするのが少し遅くなるかも。ラヴェルが弾けるかどうかを心配する前にお金の心配をする私。ラヴェルの左手の為のコンチェルトはそれまで一度も弾いたことがなかったのである。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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