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教員Aその90

「落第だったら、もう一年?」
「ん?それはないでしょうなー」
「だったら?」
「追試。間違いない。きっと追試」
「えー。もう一度、試験受けるん?」
「そう、これが最後の試験だったでしょ。全教科追試だな」
 生徒さん、うつむいて黙ってしまった。私もこれといって話すことなく帰り道を急いだ。
「先生?」
「なに?」
「友達にどう言えば…、軽蔑される…」
 道中、だんだん不安になってきたらしい。
「かんたん簡単」
「どう簡単なん?」
「ちぇ、どじってしもた。あのA、急に振り向きやがって。今度会ったら許さん。卒業したらしめたる、と悪態をつくといい」
「なんで?」
「いい子ぶってシクシクしてるといじめられるかわからん」
「先生、私、そんな汚い言葉よう使わん」
「あかん。使え。命令や」
「先生?」
「なんや?」
「私、学級委員長なんやけど…」
「なら、よけいにののしれ。普段いい子でも本当は悪と思わせろ」
「そんなもん?」
「ああ。クラスの悪が友達と思ってくれるかも知れん。まぁ、保障はできんけどな。困ったら言いに来い。助けたる」
 自分がカンニング見つけて助けたるもないだろうが…。
 職員室で生徒を担任に引き渡した。
「なんでカンニングなんか…」
 担任はきつい口調で生徒を責めた。私はその場をそっと離れた。

 一週間ほどして、その担任にたずねた。
「あの子どうなりました?」
「あ、あの子。普段勉強がよく出来る子でねぇ。学年会で話し合ったんだけど、今回は特別にカンニングした教科だけを追試にしました」
「……」
 なんと。ゆるい。カンニングすれば全教科欠点。これは生徒さん達も知っていたはず。カンニングするほうも、大げさに言えば命がけだったはず。それを、一教科だけ追試とは…。他にまじめにしていた多くの生徒たちにも示しがつかないと思うのだが。あの子の今後を考えても全教科追試にして欲しかった。こんなゆるいとまたカンニングはあるだろう。よし、今後も徹底的に見つけたる。私は幼稚な決意をした。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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