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小説・パッションと指揮 その11

 へんてこりんと言えば、金谷友人変態代表選手に青井彰がいる。今日の演奏会にも顔を出すと言っていたが。東京芸大ピアノ科出身の現役バリバリのピアニスト。演奏活動40年を超えるベテランの演奏終了後の批評もたいへん楽しみである。
 江里がラーメンを注文した。そろそろホールに戻るつもりか。
 出てきたラーメン。素ラーメンと言うか、ネギだけが入っている。いわゆる老麺。料理人のまかない食といえば良いのか。いやしい私は味を見る。
「おっ。なかなかいける。鶏ガラスープの薄味か。この店気に入った」
 私は東京の食文化が低いというのはウソだと感じた。

 1曲目のチャイコフスキー、幻想序曲「ロメオとジュリエット」が終わる。いよいよ江里の出番。私が緊張するのもおかしいが、のどが渇いて生唾を何度も飲みこんだ。
 拍手とともに江里が登場。続いて指揮者。深々とお辞儀。柔らかいお辞儀。江里の所作はどこまでもエレガント。椅子に座る。優雅で優美な江里。この後とんでもないことをした。
 

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小説・パッションと指揮 その10

「友達が来ているので迎えに行きます」
 金谷が携帯を見て席を立つ。
 しばらくして入ってきたのは和服を着た美女だった。
「かずのこさんです。東京の友達」
 我々に紹介する金谷。彼女は友達なる人物が多数いる。巾も広い。変態から学者まで。今回の美女は変人には映らない。年のころ50前後の常識派か。
「ラフマニノフの協奏曲を弾かれるピアノの達人がいますよってうかがって」
「そう、その達人がこの江里さん」
「あら?江里さん江里さんって、女性ピアニストかと思っておりました」
 かずのこさんはウーロン茶をオーダー。フードはあまりいらないと言う。
「江里さんは音大とか出ておられるんですか?」
 かずのこさんの声は穏やかで落ち着いている。
「いえ。趣味でピアノを続けていて…」
「ご趣味?わたくしも趣味でピアノを始めたのは60年近く前。もうやめちゃいましたけれどもね。続けていらっしゃるなんてお偉いですわ。それもラフマニノフをお弾きになるなんて天才なのね」
『はー?60年前?ってことはこの女性は還暦超えてるんか』 
 私は心の中でうなった。
『化け物だな』
「天才だなんて、滅相もございません。先ほどのリハーサルもメロメロな状態でございました」
 江里が和服につられたのかへんてこりんな日本語をしゃべりだす。

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小説・パッションと指揮 その9

 私が行こうと思っていたインド料理屋さんは見つけることができず。行き当たりばったり感で決めることにした。
 蒲田駅すぐ近くに「華香楼」という中華がある。派手な外観が中華定食主力の店を思わせる。
 3人で入って、まずは生ビール。
「あら?」
 思わず声を出す私。うまい。料理も期待できるかも。
 豚の胃袋、豚の耳、水餃子等を注文。なんとこれまたうまい。がつがつ食べていると視線を感じた。
「あ、江里くん。すまんすまん。君だけビール無しで」
「いえ、そんなことより…」
「コンサートマスターだわ」
「ですか?」
「林田という指揮者。宇宙人だね。見たことないタイプ。面喰ったろう?」
「ええ」
「彼とは打ち合わせしても、音合わせしても、意思相通が難しいと思う。コンサートマスターに江里くんの考えなり、解釈なり、弾きたいテンポなり聞いてもらったらいいよ」
 今回の演奏会、頼れるのは藤井とコンサートミストレスだけのように私の眼には映ったのである。

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小説・パッションと指揮 その8

「こちら、ゆりりんこさん…」
 ジョルジ氏が私のバーで紹介したのは小柄な女性。
『は?ゆりりんこ?はー????』
 ゆりりんこからは正体も実態もわからずツイッターでフォローしてくれと申請されたり、ミクシーで友達になっていたりしていた。
「えっと。ゆりりんこさん?あのツイッターの?」
「はい。そうです。以前にも一度、ジョルジ先生につれられて…」
 静かに話す目の前の女性。どう見ても30前後だ。
「あ、あ、あ、すみません。びっくりしている私を見て驚いてらっしゃると思いますが、ゆりりんこさんって50くらいかと思ってました」
「えー、それはないどす」
 ジョルジ氏がおかしな大阪弁で答える。
「食べ物のブログとか書いて有名な人なんどす」
 続けて解説するジョルジ氏。
 私はゆりりんここと金谷優里が、自分の知り合いと知り合いなので自分の知り合いと同じような年のおばはんだと信じ込んでいた。

「インド料理がいいな」
 リクエストする金谷。瞬間、昔の記憶を思い出した私。

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小説・パッションと指揮 その7

「私もそう思いますわ」
 言いながら近づいてくる坂下氏。
「もっとリハーサルですることがあるのに、完成していたらわかるんですがね。いや、調律師のあなたに言っても始まらないのですが…」
 二人でしゃべっていると江里が来た。
「先生?」
 不安そうに私に近づく。
「んにゃ、良かった良かった。本番もその調子で。あ、ランチ行こか?」
「はい」
 はい。普通の「はい」ではない響き。育ちがいいのか、礼儀正しいのか。どこか心地よい。

 アプリコ大ホールを出て右に行くと繁華街。ランチもあるだろう。
「何がいい?」
「中華とか、インド料理とか、先生調べてはりましたよね」
 金谷優里が口をはさむ。
 金谷とは3年ほど前にワインの大家ジョルジ氏の紹介で知り合った。
 

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  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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