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小説・菜その169

 厨房手伝いに菜の下の弟、忠哉が入ることに。
 オープンすると菜の知り合いや以前働いていたカフェの客が来る。
 初日、非常に忙しく終わる。が、弟とのコンビネーションで停滞することなく料理を出せた。
 しかし、菜はピザに不満を覚えていた。
「マスター、ピザの酵母を変えたいのですが?」
『またか、菜の研究熱心には脱帽するな』
「で、どのように?」
「今は、ドライイーストを使っています」
「ふむふむ」
「生きてる酵母を使えばもっとふっくら仕上がるのでは、と思うんです」
「ふむふむ」
「代えてもいいでしょうか?」
「ふむふむ」
『何回も酵母を変えて研究してたのにまたまたかー』
 適当にバーを営んでいたマスター氏。菜の完璧主義がよく理解できない。
「菜の好きなようにしてよ」
「はい」
 大きな声で返事する菜。
 菜は不安であったが、初日が終わってこの店で正解だったような気がしている。このマスター氏も意外といい人っぽい。小さい時に元気いっぱいであった菜に戻りつつあった。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

小説・菜その168

 菜は店が始まるまでに何回も試作した。特にピザ。酵母いろいろ変えて発酵具合を研究。味も研究。伸ばし方はナポリ風にするのか、ローマ風にするのか。具は何を乗せたらよいか。今までの自分のレパートリーも見直す。田舎風パテは自信があったが、ここの食材でどのような味に変わるか。オーブンの具合はどうか。菜は気になったことを捨てれない。
「マスター、どうでしょうか?」
 何回も試食されているマスター氏。いいかげんうんざりしている。
「うんうん。これでいきましょう」
 早く終わらせたいと思うマスター氏はいつも同じ返事。
「前回とは塩の量を変えたのですが、そのあたりはいかがでしょう?」
「うん。そうだね。少ししょっぱくなったような気がします」
「いえ、塩は減らしたんです。それをしょっぱく感じるという事は…。それは香辛料に問題が…」
「あ、いやいや。そう言えば塩辛くないような気もしてきた…」
 味がわかる、というのは記憶力である。判断できる舌を持つのは必要最小限条件であるが、そこに以前の味を記憶していないと意味がない。ブラインドテイストできる人間はこの記憶力に長けているのである。
 マスター氏、その才能に恵まれていなかったと言えるであろう。
「菜、まかせるわ。自分で決めて。ね。わしにもうたよるな」
 マスター氏、すたすたと厨房を出ていく。

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小説・菜その167

 次の日、三宮で、大量の皿、カップ類、鍋類、そしてボーダーの上着。
「水夫のようなこの服ですか?」
「はい、この服がピザアンドパスタトップウインの制服にピッタリだと思います」 
 マスター氏が不思議そうな顔をして質問するも、菜はにっこり笑って答える。
 その服は水色の横縞。いかにもレジャー着のように見える。
「コックコートでは?」
「マスター、新しい形のイタリアンバーを作ろうと…」
 菜の反論に反論できないマスター氏。
「このパンツもお願いします」
 見ると黒いジーパン。
「は?このジーパンンも?」
「いえ、ジーパンに見えますが微妙に違います」
「わかった、では」
「マスター、2着ずつお願いします」
「まー、そうだね。着替えもいるしな」
「ありがとうございます」
 最敬礼する菜。
 手持ちの現金がなくなったマスター氏。クレジットカードで支払う。
『制服に10万円以上払うのはおかしいのでは』
 菜の感覚と自分の感覚にずれを感じる。感じるが、ここは素直に従ってみよう、首をひねりひねり買い物を続けるマスター氏。

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  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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