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小説・菜その74

 新しい母親は菜の性格に積極性を持たそうとする。週に1度は友達を家に連れてくるように、菜を指導した。
『誰でもいいのです』
 どの子を連れてくればいいのか、迷う菜にそう言う新和子。親しい友達がもともといない菜は隣の机の子から誘うことにする。繰り返していくと、一人、二人と増えてくる。菜に友達が出来た。
 4年生になって、クラスでサッカーが流行りだした。もちろん男子の間で。サッカーのうまい吉田君につられて、クラスの男子数人がクラブチームに入る。日曜日に練習試合があると女子も見学に行く。菜も誘われるようになった。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

小説・菜その73

「そうです。菜ちゃんの本当の母親はおかあさま、今の母親はおかあさん。どう?」
 菜は大野牧師の言葉を心の中で繰り返した。
『本当のおかあさまはおかあさま、今のおかあさんはおかあさん…』
 しばらくして菜は顔を大野牧師に向けた。少し笑う。
「先生、ありがとうございます。出来ました。新しいおかあさんをおかあさんって呼びます」
 ほっとする大野牧師。うまくいったか。
「わたし、おかあさまとおかあさんがいることになります」
「そうそう、そうそう」
「先生、今から帰っておかあさんに会います。そして言います。おかあさん」
「うんうんそうそう」
 菜は教会から出て走って家に戻って行った。
『菜は、昔はよく走っていた。少しは元気になれたか』
 大野牧師は菜の後姿を見ながら思ったものであった。

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小説・菜その72

「先生、わたし、呼びたいんです。おかあさまって。でもなんだか…」
 菜はいつも同じ話を繰り返す。
「菜ちゃんは新しいおかさんは好きかな」
「わかりません。でも…。でも、嫌いではありません」
 最近、菜はおとなのようにしゃべる。苦しさが成長を早めるのか、もともと、そういう資質を持ったこであったのか。
「嫌いではないのだったら。あ、菜ちゃんは、昔のおかあさんをどう呼んでた?」
「おかあさまです」
「新しいおかあさんも?」
「はい、おかあさまです。先生、さっきからそう呼んでますけど。聞いてませんでした?」
「あ、いやいや、聞いてましたよ。確認です」
「ではね、菜ちゃん」
「はい」
「新しいおかあさまをおかあさん、って呼びなさい」
「おかあさん?」

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小説・菜その71

 年の瀬に新しい母親が同居するようになった。最初からなついていた和哉は大喜び。菜はイヤではないのだが、何かもやもやしたものを心に秘めている。奇跡が起こる月と期待した結果が新しい母親の出現。小学校3年生の菜に吹っ切れないものがある。
 新年の礼拝が終った後、菜は大野牧師に話を聞いてもらう。
「嫌いではないけど、なんだか?ふむふむ」
 大野牧師は菜の相談にどう答えるべきか、頭をめぐらせている。菜は3年生にしては感受性が鋭い。深いしもろい。1年生の時は明るく前向きの子であった。よく笑っていた。この2年半でずいぶん変わってしまった。子供にしては考えすぎるように思う。大人びている。
「先生、素直におかあさまと言えないんです」
「じゃー、なんて呼んでるの?」
「おかあさまって呼んでます。でも…」
 『そりゃー、呼び難いだろうな。菜の母親はたいへん優れた母親だった。少し天然に抜けていたところもあったが。大好きな母親が亡くなってすぐに新しい母親が出てきても、普通は素直にはなー』
 

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小説・菜その70

『菜ちゃんへ
 いっしょにこれを読むことはないと思ってました。
 菜ちゃんひとりで読んでると思います。
 おかあさまは天国に行きました。さびしくはありません。神様のところへ行けるのですから。
 だから、菜ちゃんも悲しんではいけません。
 おとうさまには新しいおかあさまをもらうように手紙を書きました。
 きっと良いおかあさまを見つけてくれると信じています。
 新しいおかあさまと仲良くしてくださいね。
 こまったことが出来たら必ず新しいおかあさまにそうだんなさい。
 もっとこまったことが出来たら牧師先生にそうだんなさい。
 もっともっとこまったことが出来たら滋賀のおばあさまにそうだんなさい。
 おとうさまはそうだんごとはにがてな人です。
 すぐにかんしゃくおこしますからね。
 では先に行って待ってます。あせらずにゆっくり来るのですよ
                         和子』
 菜は何度も何度も読んだ。これが最後と思ってもまた初めから読んでしまう。声を出して読む。鼻が詰まってうまく声が出せない。
 和子は霊能力者だった。この才能は菜にも受け継がれる。それが証明されるのは25年後であるが。

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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