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小説・菜その60

「ま、あれだ、肝臓に悪い所があるらしい。手術なしでも治るらしいのだが、悪い所を取った方が早く治ると。うんうん、ようするに、早く健康になろうと思うと簡単な手術なのでそのほうがいいと先生はおっしゃってた。で、さっき、先生にどうします?とたずねられたわけだが…。さて、どうしたものかと、ま、手術しなくてもいいのならそうしようか?な?んー、でも、手術したほうが治りが早いと、うむうむ、迷うね、ふふ」
 和子は義昭の顔をじっと見ていた。
『はー、この人、ウソをつくときは、いっつも饒舌なのよね、しゃべりすぎ、すぐばれる』
「わかりました。手術の方向で先生と打合せなさってください。よろしくお願いします」
 言いながら頭を下げる。夫婦でありながら決して礼儀を失しない和子。
「あ、そうだな、うんうん、そのように、うんうん。っじゃー」
 軽いノリで病室を後にする。いつもは不機嫌そうであまりしゃべらない義昭である。重大な事を隠しているに違いない。和子は覚悟を決めなければ、と緊張する。手術して治れば良い。が、万が一の事を考えておかねばならないのか。目をキッとつり上げて遠くを見る目に、おっちょこちょいで明るさが個性の和子はなかった。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

小説・菜その59

 家の近所の内科の先生から医科大学の付属病院を紹介された和子。そのまま入院。滋賀から菜の祖母を呼ぶことになる。
「手術して、助かる可能性にかけます?」
 父、義昭は腕を組んだまま沈鬱な表情で医者の言葉を聞いていた。
「このままでは助からないのです」
 医師は続ける。和子は肝臓がんであった。しかもかなり進んでいる。
「考えさせてください」
 義昭は考えても答えは一つしかないのはわかっている。しかし早くこの場から離れたかった。
 病室は4人部屋。窓際のベッド。本を読んでいる和子。義昭が近づくと顔を上げた。
「すみません、こんなにからだ、弱かったかしら。なるべく早く退院できるように…」
「いや、手術が必要かもと、先生が」
「え?手術?」
『しまった。早まったか』
 あせる義昭。

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

宮本忠義さん

 宮本忠義さんは震災前から北口市場の近くで鉄板焼きをなさってました。現在、アクタのあるところです。店名「永楽」。私が初めてその店を訪れたのは1990年ぐらいでしょうか。テノールの畑先生に連れられて行きました。10坪ほどのお店だったと思います。小さな大衆浴場の隣でした。薪を焚いての旧式のお風呂屋さんでした。
 1995年の震災後、本通りに移られました、だし巻きが美味しいと評判のお店でした。
 1997年、ポンテリカ2に弊店トップウインと上下で仲良くしていただきました。『どんどん店が小さくなる、でもさからわない、公団に言われたままにする』とおっしゃってました。私は設計段階で公団でごねまくりましたが、対照的なおとなしい方でした。ほどなくゴルフに誘われました。宮本さんは練習熱心で、打ちっ放し用の小さなゴルフバッグを持って歩いてるのをよく見かけました。永楽杯というゴルフコンペは古野電気の方々を中心に行われました。へたくそな私は途中でやました。2年くらい前、道でお会いした時『続けてますか』と聞いたら『皆さん定年でやめられて続かなくなった』と寂しそうに笑っておられました。

 今年春、がりがりに痩せて歩いてるのをお見かけしました。『癌でお腹をごっそり取られた、歩くリハビリ中です』とおっしゃってました。8月に店の前でしゃがんでる宮本さんを見ました。『しんどいー』と苦しそうにうなってました。水でも、と私は言いましたが、いいよ、と断られました。1分か2分か、横で私もしゃがんでおりました。
「宮本さん、では私は行きます」
「……」
 無言で首を立てに振られました。それが最後でした。今、いらない、と言われてもお水を差し上げればよかったと後悔しています。宮本忠義さん、2010年8月12日に亡くなられました。

 先日、9月25日にふじや本店で『宮本忠義さんを偲ぶ会』が開催されました。7,80人集まったでしょうか。宮本忠義さんが好きだったゴルフの話を中心に思い出を語り合いました。  合掌。

テーマ : こんなお話
ジャンル : ブログ

小説・菜その58

 新学期早々、家庭訪問があった。家に上がらず玄関先で軽く話す程度。
「菜は、わがままで…、すみません」
 山岸先生に会って和子は謝ることから始める。1、2年生の時には本橋先生によく思われていなかった。先に謝ったほうが気が楽。
「小西さんはやや神経質ですね。わがままとは質が違います。家庭で何か問題はないですか?」
「いえ、家事をよく手伝ってくれます。弟の面倒も。最近、わたし、体調が思わしくなくて…。自分の娘の事を言うのもなんですが助かってます」
「体調?お痩せですが何か?」
 山岸先生から見て、菜の母がかなり痩せているように見える。
「はい、ここ3ヶ月ほどで急激に痩せました。食欲がないと言いますか」
 天然の母、和子は菜の家庭訪問であることを忘れ、自分の事をしゃべりだした。
「一度、総合病院へ行かれては?」
「はー、そうですね」
「まー、小西さんは学校でも特に問題はありません。何かあったら学校まで連絡ください」
 山岸先生をお見送りして和子は大きくため息をついた。和子は思う。病院行かなければならないかしら、入院にでもなったら子供3人どうしたらよいのか、自然に治るかも…、しかし最近特に調子が悪い、明日近くの内科に行こう。
 
 

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

小説・菜その57

 手渡されたボールを地面に落とす吉田君。何が始まる?興味津々の同級生。
 両足でボールをはさんだ。はさんだまま軽くジャンプ。右足でボールを地面にたたきつける。跳ね上がったボールを右足、左足、右足と交互にボールをのせる。
「する?」
「やるー」
 放課後ドッジボールをしていた少年たちはルールも全くわからないサッカーをするようになった。たった1日でスターになった吉田君。言葉の不自由さはハンデにならなかった。しかし菜は思う。ジュンのほうがかっこいい。

 3年生になるとクラス替え。スーパースターの吉田君も同じクラスになった。菜の新しい担任は男の先生。ロマンスグレーの長身、強面。
「静かに」
 先生が小さな声で「静かに」を言うだけでクラスはシーンとなった。
「これから、2年間、君たちの担任をする。名前は山岸歳三である。よろしく」
 言葉に力がある。迫力と言うのだろうか。菜はこわい感じの男には父親で慣れている。しかし、菜が感じたのは山岸先生から醸し出される優しさだった。

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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