AX

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

フィクション★ハタッチⅡその8

「何です?何が?」
 水井は意味を知りたがった。
「すぐに来ていただけますか」
「理由を…、何が起こったのか言ってください」
「こちらへ、お願いします」
 埒が明かない。この科長は、前任の科長からうとまれ、冷や飯を食うような環境にいた。そんな男と水井はウマがあって、よく一緒に飲み歩いたものだった。
 理由をたずねても答えようとしない。答えることが出来ない何かが起こってしまったと考えるべきか。水井は車を出した。5分で高校に着く。
スポンサーサイト

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

フィクション★ハタッチⅡその7

「きのうは、眠れなかっただろ」
 岩淵が同情したように中畑に聞く。
「いや、大村と水井先生とドンチャン騒ぎをした」
「どこで?」
「ランボーっていう居酒屋で…」
「ふっ。またか、飲みまくった?」
「あぁ、飲んで飲んで飲みまくった。ははは」
 中畑自身、3合も飲んでいない。飲めなかった。苦かった。それでも、大村が一生懸命盛り上げてくれていたので、つられて、はしゃいでいた。その日は眠れた。しかし、今から1年の浪人生活を考えると自然と憂鬱になる。
 
 4月初め。あと数日で新学期が始まろうとする午前中。水井の家に電話がかかってきた。
「すぐに校長室に来てください」
 電話の主は音楽科の科長である。水井は普通の空気でないのを瞬間に察知した。

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

フィクション★ハタッチⅡその6

 水井は静岡の『おんななかせ』を買った。ここは、1升ビンを経営母体である酒屋で買ってそのまま持ち込んで飲める。ゆっくり飲んで10時に空になった。
 翌日、中畑は大学入試の失敗を担任の先生に報告。級友に言うと大騒ぎになった。同情のあまり、泣き出す女子もいた。しかし、中畑自身は何故かすっきりした気分。来年こそ、きっちり決めてやる、固い意志を持って浪人の覚悟が出来ていた。昨日、水井先生も大村も入試の事には一切触れず、ただただ、大騒ぎしながら飲んだだけであった。それを彼らの無言の励ましに感じたのである。

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

フィクション★ハタッチⅡその5

 飲みに行く、とは言ったものの、はたして、一見して未成年とわかる彼らを連れて行けるところはあるのか、水井は自分の行きつけの飲食店を思い起こしていた。
「で、どこに行きます?」
 ニコニコを続けながら大村が聞く。
「大騒ぎできるところで、君たちが目立たない…、はて…。ま、車出そう」
 酒気帯び運転が日常の水井。とんでもない不良教師。
「あった。あそこに行こう」
 水井が思いついたのは、酒屋が経営する居酒屋であった。空き地にプレハブを建てただけの店。しかも、堅いことは一切言わない。店主に、彼らを高校生と紹介しても平気で酒を出すであろう。
 10分ほどで到着。
「Rimbaud?先生、なんて読むんです?」
 店の入り口にフランス語で店名が書いてある。
「ランボーって読む」
「えー、ヤバイ店と違うんですか?」
「アルチュール・ランボーっていうフランスの詩人に引っ掛けたんだよ」
「あー、アルコール中毒。おっしゃれー」
 大村はあくまでおどけとおし。
 6時。ほぼ満席だった。畳敷きの大広間に簡易的なパイプの机が並んでいる。クラブの合宿に来たかのようなしつらえである。

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

フィクション★ハタッチⅡその4

 大村は家にいた。
「え?久しぶりに遊ぶんですか?すぐ行きます」
 受話器からの明るい声が耳を刺す。今の中畑にはまぶしすぎる。
「飲みに行くぞ」
「先生、肝炎は?」
「治った。発病してから初めての酒。うまいだろうな。さて、どこで飲むか」
 水井は思う。とんでもないミスを中畑はしでかしたに違いない。そうでなければ、入試の真っ只中、真っ青な顔をしてここに来るはずがない。家にも戻らず。
「先生、オレ…」
「止まってしまったんか?」
 まず、考えられるのは、あがって演奏を継続できなくなってしまう事態。入試では致命的、コンサートではピアニスト失格。
「違うんです」
 中畑は、曲目のⅡを書き間違えてⅠで提出、失格になった様を簡単に話した。
「ふーん。じゃー、来年は書き間違えないように気をつけよう。なーに、一晩寝て忘れられない事なんてないない。あ、泊まるか?」
「はい」
「じゃー、家に電話」
 30分ほどで大村が来た。
「全快祝いですか?」
 笑いながら口を開く。しかし、大村もただ事ではないことを二人の雰囲気から察していた。中畑の1年後輩である自分はおどけるしか能がない、大村は勝手にキャラクターを決めつけ、笑って見せたのである。

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

higemaster

  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
最近の記事
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。