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教員Aその100

「先生、もっと、しっかり…。でないと生徒になめられるわよ」
 ホームルームが終わって山野先生が私の耳元でどなった。ナチュラルでやかましい声なのに大声を張り上げられると鼓膜が破れそうだ。桜井先生が横でニタニタ含み笑い。山野先生はこの桜井先生の子分格のようだ。桜井先生の言うことはなんでもハイハイと聞く。
「はぁー」
 私は池山語でぼかした。
「どうするのっ?」
 今度は質問された。
「まぁ、なんとかなるでしょ」
「なんとかなるって、どうするの?」
「ふっ。山野先生」
「なにっ?」
「ふふっ。声が大きすぎて、かえって聞こえにくいのですけど…。ふふふ」
「……」
 山野先生はプイッと横を向いて休憩室に行った。
 翌日…。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

教員Aその99

 クラス運営に私一人では頼りなく思われたのか、副担任がついた。山野という女性の先生。40前くらいか。美人だが声が高い。まぁ、声楽出身なので普段から声の質が違うのかもしれない。私が暴走しないためのお目付け役とも考えられる。
 最初のホームルーム。25名の小さなクラス。
「あー、えー、あのー」
 私がしゃべりだしても生徒は騒いで全然静かにしない。静かにしているのは怖いレッスンを受けている私の門下生だけだ。
「これー、静かにしなさい。静かに。ほれー」
 後ろで山野先生が叫んでいる。心なしかよけいにうるさくなった感じがする。
「やかましい」
 私がどなってもまだ騒いでいる。なかなかしぶとい連中だ。

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教員Aその98

 4月、新学期。なんとか1年間お勤めできた。しかし、ここを脱出したい気持ちは、やはりある。生徒は好きだ。私は先生と呼ばれるのが性にあってるようだ。学校の雰囲気も悪くない。が、何かぬるま湯のようで居心地が悪い。特に音楽科にバスケットボール部のような緊張感がなかった。私の門下生だけしごいても、なぜか違和感がある。全体のレベルを上げていかなければ音楽科の意味がない。
 新年度、高校2年生の担任をまかされて、それなりに燃えるものがあった。音楽でしごきたおす。どこまで出来るかわからないが、やってみる。
 バスケットボール部は予想通り、4月に頼みに来た。顧問してくれと。私は冷たく突っぱねた。
「でけへん。でけへん。他、あたって」
 去年、新任で同時に入った数学の教員がいた。八田先生。八田先生は私と違って運動神経が良さそうだ。私は彼にあらかじめたのんでいた。バスケットボール部の面倒をみてやってくれと。彼は、その時は返事をぼかした。
「先生、顧問の先生、見つかりました」
 キャプテンが職員室に来た。
「八田先生がしてくれることになりました」
 良かった。私は何もしてやれなかった。八田先生ならなんとか出来るだろう。私のように練習試合も含めて全敗はありえない。彼女達は勝つ喜びをきっと感じることが出来る。
 

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教員Aその97

「M科2年生の担任?大抜擢やねー。で、クラブは?」
 片山先生は、バスケットボールクラブの顧問を続けるかやめるかと聞いている。
「無理ですかねー」
「さぁー。無理ちゃう?」
 ついにこの1年間、練習試合も含めて1度も勝てなかった。BでスタートしたリーグはDに落ちた。
「クラブ、辞めますわ」
 名前だけ、と言われて頼まれた顧問。今は負け続けの状態に大きく責任を感じる。何とかしてやれなかったのか…。何とかする気がないのに悶々とする。ゆですぎた半熟玉子、逝ってしまった鯛の刺身、炊きすぎた鶏モモ肉。やりようがあったのでは…、救えたのでは…、ひとつぐらい勝てたのでは…。どんなに負けてもくじけずに練習する部員に私は教育の方向を教えてもらった。対して私は、彼女達に何も出来ていない。今、辞めるのは責任放棄のような気がする。が、もうちょっとましな教員に顧問をしてもらいたい。少しのアドバイスで勝てるはずである。
 3月末、バスケットボールの部のキャプテンに来年度は顧問をしないと告げた。
「せめて、バスケットのルールを知ってる先生に頼みなさい」
「他の先生ですか?」
「そう、ワシはひどすぎでしょ」
「A先生、クラブの顧問、いやになった?」
「いやになったんではなくて、来年度忙しくなるらしいので…。顧問は出来ない、と、思う」
「他に先生、見つからなかったら、またお願いしていいですか?」
 はぁ?こんな私でもまだ続けて欲しいんか?
「ううむ。どうしても、どうしても、何としても見つからなかったら…、しかたない。もう1年…」
「あぁ、よかった。来年度も頼みます」
「ちゃうちゃう。他の先生、絶対探せ。わかったな」
「はーい」
 大きな返事をして、キャプテンは走って行った。あれは、見つける気、ないな。困った。なんとかしないと。

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教員Aその96

 学年末の定期試験では、ダルマサンガコロンダ作戦で二人のカンニングを発見した。しかし、その後はまったく捕まえることが出来なくなった。カンニングのそぶりも気配もなくなった。きっと、Aが試験監督の時はカンニングは難しい、との噂が広まったに違いない。
 定期試験後、池山先生に話があると言われた。
「来年度、M科の2年生の担任、どう?」
 日乃日乃学園では音楽科のことをM科という。ミュージックのM。
「はぁ…」
 私は、池山語でぼかした返事をした。担任の仕事は知らなかったし興味もなかった。そして、池山先生は、どう?と聞いただけで、内容までは何もおっしゃられなかった。片山先生に相談することにした。

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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