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グラスの雫№5 真鶴その10

 私は、それからシングルモルトの原材料について調べた。まず、自家製のモルトを作っているところ。バルヴェニー、ベンリアック、ハイランドパーク、ボウモア、ラフロイグ、スプリングバンク…。数えるほどしかない。そして、これらのメーカーが100パーセント自家製とは限らない。自家製麦もしているし、業者からも買っているかもしれないのだ。他の100ほどあるスコッチメーカーは製麦業者からモルトを買わなければならない。
 かつて、ボウモアを飲んだときに、オーへントッシャンが持つ、化粧品の香りを感じたことがあった。原材料=モルトを調べていくうちにひとつの推測ができる。化粧品の香りがするモルトと潮の香りがするモルトを使って蒸留すると華やかなボウモアのようなスコッチが出来る。アイラ島でなくてもだ。あくまで想像だが、オーヘントッシャンとグレンギリーとボウモアは共通の製麦業者を使っている。ので、お互いに似た味わい、香りを持つのではないか。まぁ、詳しくは真相は親会社であるサントリーに聞くしかないのだが…。でなければ、内陸にあるグレンギリーで潮の香りのするボウモアに似たスコッチが出来るはずがない。

「マスター。転勤」
 河内氏がめずらしくまじめな顔つきで店に入ってきた。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

グラスの雫№5 真鶴その9

 まず、一粒、口に入れてみた。噛んでみる。ん?なんと、ラフロイグそのものの香りがするではないか。瞬間に私は悟った。長年、不思議に思っていたことが氷解した。
「森ちゃん、このモルト、ラフロイグの香りがするね」
「はい。します」
「つまり、ラフロイグの独特の香りは蒸留する前の材料で決定されるという事かな」
「そうでしょうね。ピートを炊く時に香りがつくんでしょうね。つまり、人工的に付けられた香りでしょうね」
 間違いない。アイラ島のスコッチは酒庫で眠っている間に海の香りがうつるのではなかった。最初から決められていた香りだったのだ。
 

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グラスの雫№5 真鶴その8

「マスター、神戸のバーでおもろい物、もうてきました」
 一見柄の悪そうな、実は、柄の悪い森ちゃんが、透明なビニール袋を私に手渡した。
「……?」
「ラフロイグのモルトですわ」
 目の細い森ちゃんはさらに眼を細めていたずらっ子の目をして私を見た。
 森は、1996年から私の店を手伝ってくれていた。もともとトップウインのお客さまで山岳写真家の中藪啓示の知人。二人でワイワイ飲んでは私の店を盛り上げてくれた。その会話のセンスにほれて、私の休みの日に留守番係として店をまかせた。
「袋を開けてもいい?」
 私は、ラフロイグのモルトと聞いて非常に興味を持った。ラフロイグはアイラ島を代表するシングルモルト。潮っぽさではアイラ随一と評判のウイスキーだ。
「ええですよ。マスター、食べてみてください」


グラスの雫№5 真鶴その7

 シングルモルトウイスキーは麦を使って作られる。しかし、収穫したままの麦では、酵母がうまく働かない。なぜなら、麦が持つでんぷんは分子が大きく発酵しにくいから。だが、麦が発芽するとき、自らの体内にある酵素「アミラーゼ」を活性化させる。その「アミラーゼ」が、でんぷんを分解して、ブドウ糖に変化させる。その糖こそが、酵母が喜んで食べる物質である。酵母が食べた後には、アルコールと炭酸ができる。そのままだと、ビール。そのビールを蒸留させるとウイスキーになる。
 麦芽と書くが、実際は麦根。麦は水に漬けると芽より先に根が出てくる。で、そのままにしておくと、芽が出て植物の麦になってしまう。だから、ある一定のところで発芽を止めなければならない。その止める作業にピートが使われた。

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グラスの雫№5 真鶴その6

 私のバーはシングルモルトを中心に棚に並べている。河内氏はバーボン好き。だが、適応力のある河内氏は徐々にスコッチを飲みだした。
「いやー、すばらしい。このスコッチ。グレン・ガリオッホ。度数高いね。何度?」
 河内氏はハイランドのシングルモルトをチビチビなめながらうなっている。
「グレン・ギリーです。またわざと間違えて…。53度ありますね。原酒。うまいですか?」
「うまい。化粧品の匂いがする。なんか、ローランドの何かに似てるなぁ」
「そうですね。グレン・ギリーはローランドのオーへントッシャンに似ていたり、アイラのボウモアに似た香りを持ったり…」
「おいしかったら何でもええねんタイプの蒸留所やね。俺と一緒や」
 河内氏は目を瞑ってもう一度、いつくしむようにグラスをなめた。
 ハイランドがローランド、アイラと似た香りを持つ。アイラウイスキーは潮の風に長年あたって海の香りが樽にうつる。それならわかるが、ハイランドのグレン・ギリーに何故潮の香りが?この謎はラフロイグの麦芽を手に入れて解明されることになる。

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  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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