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バー物語(フィクション)№303

 パワーショベルが西の壁を破った。入り口横の飾り窓が引きちぎられた。
 『つぶれた喫茶店から窓をもらってきたぞ』
 ガンちゃんが得意げに取り付けてくれた。
 古道具屋で買ったスツールが飛び出す。1脚4000円。浅いブラウンのレザー、背もたれつき。しまった。公団の担当者に椅子などは撤去しとけと言われてたなぁ。ま、いいか。
 快晴。初秋の夕暮れ。
 ほこりの向こうにL字のカウンターが見えた。
 『失敗は許されねーからな』
 西田氏が顔を引き締めて電動ノコで切ったのは3年前。吾妻さんはカウンターを切り取って甲風園の新店舗に持っていった。私は滅びを選んだ。伝統があるわけでもなし、思い出を引きずるのは女々しい。
 東の壁が崩された。のんちゃんが隙間風が寒い寒いとガムテープを張りまくった壁。地震に耐えた3坪のバーはあっけなく瓦礫の山と化した。
 『村上先生が迷って来れなくなってしまうなぁ』
 太陽が赤い。1997年9月。バー物語完

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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

ピッコロ劇団 「さらっていってよピーターパン」

 2006年12月24日兵庫県立芸術文化センターの中ホールでありました。ファミリー向けのお芝居ですが大人も楽しめますよというTさんのお勧めで見てまいりました。ピッコロ劇団は1月の忠臣蔵以来約1年ぶり。もともとミュージカルを主とする劇団ではないはず。お芝居に音楽と歌がくっついていると思うと十分楽しめます。ピーターパン役の奇異 保さんがかなりユニークな味を出されていました。たぶん私と年齢が近いはず。腰が痛いと言いながら芝居をなさっているのは本音100パーセントでしょう。力を感じさせる芝居をなさる俳優さんが多いので、歌の上手下手というより説得力のある歌を歌う、もしくは録音する方向で工夫すると一ランク上の本格ミュージカルの仲間入りに一歩近づけるのではないかと思いました。

テーマ : 演劇
ジャンル : 学問・文化・芸術

バー物語(フィクション)№302

 「ひろーい。あかるーい」
 「外が見えるぅ」
 「しかも便器がない」
 予想通り3人ともびっくりしてくれた。奥行き約1.5メーター、幅が約3.5メーターの贅沢なトイレ。換気用の大きな窓を付けた。開けると外が丸見え。道行く人を観察できる。化粧室本来の機能を持たせた洗面室とトイレを完璧に分けてしまった。
 「バーもトイレもかなりユニークですね」
 まっちゃんがうなづきながら観察している。
 「しかし、こちらからあっちが見えるという事は…」
 「外からもこっちが見えるじゃん」
 ようちゃんが笑った。
 「まー、見られるのがいやなら窓を閉めてもらって…」
 しかしこの私の自慢のトイレも窓に手すりがないと危ないし化粧室とトイレの間仕切りが完全でなかったので後に手直しすることになった。

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

バー物語(フィクション)№301

 段ボール箱にボトルを入れていくのは野田さんとよーちゃん。私とまっちゃんがそれを新店舗に運び入れる。グラスも全て運び終わったのは2時前。手伝ってくださった人たちの手際がよかったのか意外と早く終わる。
 新店舗に集まって缶コーヒーを飲んでもらった。
 「野田さん、よーちゃん、まっちゃん、ありがとう。助かりました」
 「マスター、何言ってるん。グラスを洗わな」
 言って、野田さんは段ボール箱からグラスを出し始めた。
 「それですか。新型洗浄機。ドイツ製?」
 まっちゃんがウインターハルターを覗き込む。
 なんと親切な。この際甘えさせてもらおう。
 洗浄機から出来上がったグラスを拭き終わって3時。
 「本当にありがとうございました。ここで、明日から営業します」
 「すごいね、引越し休みなし」
 まっちゃんが感心する。
 「外のトイレってどれ?」
 よーちゃんが聞く。
 「こちらです」
 皆を表に出して斜め向かいのトイレのドアーを開けた。室内灯に灯を入れた。いっせいに歓声が上がった。

テーマ : 連載小説
ジャンル : 小説・文学

バー物語(フィクション)№300

 引越し当日。
 「マスター、何から運ぶの?」
 野田さんがしびれを切らしたように私に声をかけた。常連さんには以前に<24日の夜に荷物を運び出すので手伝ってくださったらありがたい>と言ってあった。夜中の12時くらいからスタート出来ればと思っていたが、12時現在、あいにく満席。皆さん、飲んだりおしゃべりしたりで楽しげ。 
 「手伝う気のない人は帰りよし」
 野田さんが今度はカウンターの常連さんたちに声をかけた。
 「長尾さん、表に出て将棋しましょうか?」
 ぽこちゃんがさっさと店の外に出ていった。長尾さんもバーボンのロックを片手に持って続く。どこからか机と椅子を持ってきて入り口横で縁台将棋を始めだした。8月下旬の真夜中といってもまだまだ暑い。ポコちゃんは団扇をあおぎだす。
 「ボク、手伝います」
 まっちゃんが立ち上がる。他の人たちはお勘定を済ませて帰っていった。
 「今日はボトルとグラスを全て運びたいのです。冷蔵庫のような大きなものは明日、運びます」
 「ダンボールあるの?」
 「車をここまで持ってきます」
 段ボール箱は車に積んであった。新店舗まで300メーターくらいか。車なしで運べる距離ではない。
 

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  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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