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グラスの雫№6 ブラックニッカその41

「ううむ。もう一度味わって見るとスペシャルの方が甘く感じますね」
 藤田氏はきき比べが面白くなってきたようだ。
「マスター、この甘さはどこからくるのでしょうね」
 ウイスキーの甘さ、しいては酒の甘さ。
 甘さを加えるために水飴を入れた日本酒もある。甘みに価値を見出していた時代が、かつて日本にあった。また、今でも甘さを大切にする地方がある。九州の醤油や食べ物が甘いのは、甘さ=ごちそう、という背景があるからだ。

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

グラスの雫№6 ブラックニッカその40

「香りはスペシャルの方が太いですね」
 藤田氏は面白い表現をした。太いか。あまり聞かない言いまわしだ。
「味はクリアブレンドが非常に飲みやすいです。スペシャルは口の中で粘るようです」
 私は藤田氏の感想を聞いてから味を見た。なるほど…。クリアブレンドは甘さが前面に出ている。何かサントリーに近い、軽さを感じる。ニッカは本気で売れる方向を模索しているのかもしれない。スペシャルは改めて味わうと非常によく出来たウイスキーだ。かすかにピートもあるようだ。ピート?
「藤田さん、クリアブレンドはピート臭がしないですね」
「はぁ。そうですか。よくわかりませんが、スコッチ臭さが無いという事でしょうか」
「そうです。スコッチのタッチがあまり感じられません」
 竹鶴政孝は北海道の余市に工場を建てた。ピートがその地にある、のが一つの理由であったはず。ニッカウイスキーはピートをやめたのだろうか。もしくは、ピートを用いないモルトが昔からあったのか。はたまた、ピート臭を抜く技術を使ってまろやかにしたのであろうか。

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

グラスの雫№6 ブラックニッカその39

「ええ、クリアブレンドはつい最近発売されました。デザインも似ているし、味がどうなのかな」
「マスター、まだ比べていない?」
「ええ。あ、藤田さん、ここに2種類ありますから味見ごっこしましょうか」
 藤田氏は返事をせずに、ニッコリ笑った。
 私はショットグラスにブラックニッカスペシャルとクリアブレンドを注いだ。名前の通り、クリアブレンドの方がやや色が薄い。

テーマ : 中央競馬
ジャンル : ギャンブル

グラスの雫№6 ブラックニッカその38

「素直な甘さを感じます。若い頃に飲んだサントリーのリザーブはすこぶる甘かったです。何か砂糖入りのような…。いや、ど素人がごめんなさい。でも、昔のリザーブは本当に甘かったなぁ」
「藤田さんが飲んでいたのは砂糖とか入れて甘くしていたかもですね。しかし、今でも、スコッチ、コニャックは、カラメルで着色してるのありますよ。カラメル入れると甘くなりそうな…。ましてやジャパニーズウイスキー、着色したり、甘くしたりは当たり前…」
「マスター。このブラックニッカは?」
「いやー、1965年に販売以来、人工的に甘さは足していないと思いますがねー」
「同じブラックニッカでも最近はクリアブレンドをよく見ます。兄弟分でしょうか」

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ジャンル : 小説・文学

グラスの雫№6 ブラックニッカその37

「そうですね。歴史の偶然とは怖ろしいというか深いというか…。戦国時代の武将、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、皆さん尾張、三河と同じような土地の出身だし…。マスター、音楽にもそのような偶然あります?」
「古くはバロック時代の巨匠、バッハとヘンデルは同じドイツ出身で、どちらも1685年生まれです。ロマン派ではショパンとシューマンが1810年生まれ。何かと何かが重なるのって探すともっととあるかもですね」
「で、このブラックニッカは?」
「1965年生まれまです。藤田さん、どのような印象を持たれます?」

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  • Author:higemaster
  • 桜咲くころ=淡路島の地鶏焼きをメインに熊本直送馬刺し、鹿児島の親鶏、黒毛和牛のてっちゃん、ほか、おいしい一品料理を楽しめます。また、日本酒、焼酎、ワインがリーズナブルに楽しめます。
    ピアノバー・トップウイン=1935年製の古いスタインウェイのグランドピアノがたまに鳴ります。ワインを中心にカクテル、シングルモルト、日本酒、焼酎等できるだけ品質の高いお飲みものをそろえるように努力いたしております。
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